福島おうえん勉強会

チェルノブイリ被災地訪問報告
−ベラルーシ・ノルウェーで見た「放射線と向き合う暮らし」−

第1部 「ノルウェーの被災地における畜産業と暮らし」

6.質疑応答

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尾林(司会):

それではですね、今から10分か15分くらい質疑応答の時間をとりたいと思います。よろしいでしょうか。では、佐藤さんに対して質問がある方は挙手をお願いします。どうぞ、では1番前に座ってらっしゃる方、お願いします。

質問者A:

費用の補償なんですが、先ほどプルシアンブルーとか、クリーンフィードの費用は国が、手間は市民がとおっしゃりましたが、基準を超えた食品に対する補償はどういう形になっているんでしょうか。ノルウェーの場合。

佐藤:

ええと、それは国が補償しているというふうに思います。具体的な金額というのはちょっとわからないですけども、やはり失われた経済的価値に対する補填はあったと思います。

司会:

よろしいでしょうか。では真ん中に座ってらっしゃる方。

質問者B

ノルウェーおよびスウェーデンで、事故後特定の病気が増えたとか、そういうような報告っていうのはございますでしょうか。

佐藤:

ええとですね、私もちょっとそれを説明しようと思って、時間が押しちゃってこの図をはしょっちゃったんですけども、(サーミ人の内部被曝のスライドを映す)これはあの、トナカイの肉を比較的多く食べるサーミの人々の内部被曝について示した図なんですね。

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で、両方ともサーミ人なんですけども、住んでる地域がちょっと違います。左側が内部被曝が高い地域の人々で、比較的低い地域のサーミ人の人々は右側のグラフなんですけども、赤いグラフが示しているのは、もし対策をしなければ、彼らが平均的に受けていたであろう内部被曝を示していますね。ですから事故直後に何も対策をしていなければ、年間10mSvぐらいの被曝をしていただろうと。それが様々な対策によって緑の線で表しているのが、これが実際の実績です。

で、まあ、これを見ればわかるように、最初の4、5年っていうのは、年間の内部被曝が1mSvを超えていますね。で、それからまあ徐々に下がっていくわけなんですけど、サーミの人々の健康被害っていうのもノルウェー政府っていうのはちゃんと追跡調査をしています。それによると、癌のリスクの上昇っていうのは見られていないと。で、私はノルウェーの報告書しか見ていないんですけど、その報告書によると、フィンランドやスウェーデンでも同様の研究がなされていて、結果は同じだったというふうに、むしろその、食生活に対するアドバイスがなされたことによって、食生活が改善されて、むしろリスクが下がったというような報告もあるというふうに、私が読んだ報告書には書いてありました。

司会:

ありがとうございました。他に何か質問ある方、手を挙げていただけたらと思います。では前の、赤い服の方。

質問者C:

先ほどのお話ですと、2011年になって初めて航空モニタリングが始められたということですが、ここまで時間が空いたのは、純粋に費用的な問題なんでしょうか。それともその前後で何か再問題化されるような事象があったということが原因なんでしょうか。

佐藤:

私もなぜもう20年近く経った、20年以上経った2011年にいきなりそこでモニタリングやったのか理由はわからないんですけども、それ以前にやらなかったというのはやっぱり費用的な問題が大きかったんじゃないかと。

やはり事故直後というのはそういう準備がノルウェーはできてなかったそうで、そういったことにお金をかけるよりも、現実にある問題、日々の問題に対しての部分に費用を注ぐべきだというような考え方だったのではないかという風に思っています。

質問者C:

ありがとうございます。。

佐藤:

あ、安東さんが今後ろの方で。

安東:

さっきそのモニタリングが2011年だった件はラヴランスさんに私も不思議に思って聞いて、ノルウェーの方では問題になったのがトナカイとか牧畜の問題であって、土地の問題ではない、要するに牧畜が汚染されていなければ外部被曝とかはそんなに問題になっていなかったので、優先順位を考えたときに航空モニタリングの優先順位が低かった…で、ベラルーシの場合は人間を避難させるとか、人間を動かさなくちゃならなかったので、土壌汚染マップが重要になった、という話をされていらっしゃいました。

司会:

ありがとうございました。他に質問ある方いらっしゃいましたら手を挙げていただけたらと思います。お2人いらっしゃいます、では別の方から。

質問者D:

すみません、ひとつ質問があります。住民の方が例えば放射能というものの影響があると感じたときに、その住民の方が例えばアルコール中毒が増えたとか、精神的な要因によって何か影響があったような事、というのはあったのかどうかというのはご存知でしょうか。

佐藤:

えーと、それについては今回の視察では聞いてませんね。ちょっとそれはわかりません。

質問者D:

わかりました。ありがとうございます。。

司会:

あ、でも、当時住民の方がチェルノブイリの事故の後にとても不安に思った、っていうのはお話されてはいたんですよね。

佐藤:

そうです、そうです。で、その不安がもとに何か病気になったかというところまではちょっと聞いていないんですね。

司会:

はい。

質問者D:

「ありがとうございます。

司会:

よろしかったでしょうか。それではもう1回真ん中の方。・・・すみません、スタッフがマイクを持って参ります。

質問者B:

すみません、オスロなどの都市部の消費者たちからですね、600Bq/kgというのは甘いんじゃないかとか、緩いんじゃないかとか、そういうような意見というのは出てこなかったんでしょうか。

佐藤:

そうですね、そのあたりというのは私いくつかノルウェーの文献を見てみたんですけども、その分について書いてあることとしては、消費者の間にも不安が広がったと。ただしノルウェー政府の関係機関が基準値を設けたことによって、モニタリングをしっかりしてくれることに対する信頼はあったと、そこで消費者の信頼が維持されたというふうに書いてありました。

質問者B:

じゃあ例えば都市部でも、今普通にそういうさっきの地域から生産されたものが売られているということで・・・

佐藤:

そうですね。今はおそらく20数年以上たっている今ですので、問題なく、気にする人もいないというふうに私は思います。ただ直後はどうだったかということになると自信もった答えは言えません。

質問者B:

ありがとうございました。

司会:

ありがとうございます。まだいらっしゃいますか。はい、後ろの方。

質問者:E

ありがとうございます。ちょっと先ほどのご発言と近いところがあるんですが、ノルウェーとスウェーデンとの違いで、例えばこの基準値信用できないとか、食べ物食べたくないとかいうふうな雰囲気とかいうのがあったのかというのがまず一点と、もうひとつは例えば自己消費ですね。自分のところで食材を食べる率とか、流通品が多いのかとか。まあ当然北欧とか農産牧畜の国家においては自分で自分のものを食べると、そういう流通品以外の食べ方というのが結構多いのかなと思ったんですが。そこらへんの雰囲気をちょっと教えていただければと思います。

司会:

2つ質問があったと思いますけど・・・

佐藤:

そうですね。1つ目は消費者の間で忌避するというような動きがあったかどうかです。この本を訳したときに少し出てくるんですけども、やはり汚染地域の住民の中には、地域で生産された牛乳を避けて、別の地域まで買出しに行こうとする人達もいたというふうなことが書いてあります。ただそれは、そこの酪農業者は国が300Bq/Lという基準を設定したにもかかわらず、30Bq/Lというさらに厳しい基準を設けて流通されていたそうなんですけども、それでも人々は嫌がって、他の地域まで買いに行こうという人もいたということが書いてありました。ただそれがどこまで一般的だったか、というのはちょっと分からないですけども。

あと市場流通品でないものを自分達で消費するということに関しては、やはりあると思います。特に一般的なのは、夏の終わりから秋にかけて、森の中にベリーがたくさんできるんですね。ブルーベリーだとかコケモモだとか。そういったものを自分達で採りに行って自分の家でジャムにするというのはかなり一般的だと思います。それからキノコを採って食べるというのも非常に一般的だと思います。

で、スウェーデンでも汚染の一番ひどかったあたりというのは、今でも場所によっては1000Bq/㎏を超えるようなキノコも出ています。

それに対してどういう注意がなされているかというのは、そうですね、その自治体が検査結果を公表するぐらいはあるんですけども、国がどういうアドバイスをしているかというと、今の時点はちょっと分からないですね。あの、事故直後というのはやはり、そういう自家消費の多い人向けのアドバイスというのを冊子にして配ったそうです。でその際、これは自家消費が多い一般のスウェーデン人だけじゃなくて、トナカイだとか、淡水魚をたくさん食べるサーミの人々に対して出されたアドバイスもあるんですけども、調理の際にどういったことに気をつければ、なるべくセシウムを抑えられるかと。調理だとか、でどういったものを避けるべきなのか、というようなアドバイスが書かれていたそうです。

司会:

よろしかったでしょうか。ありがとうございました。では、最後に一番前の方の質問を受けたいと思います。

質問者:F

ありがとうございました。ええと、検査体制なんですけど、汚染地域だけじゃなく全域で行われていたものなのか、またこう経年で、半減期で減ってきて、どこまで減ったら検査をしないものなのか。今でも全部検査するということでやられてるんでしょうか。

佐藤:

はい、ノルウェーの畜産とか酪農に関しては、やはり汚染がひどかった地域というのがある程度特定されているので、その中でまず検査を行うと。だからこれは全国で行われていたものではない、ということですね。

で、最初のうちは高い汚染度がやはり検出されると。で、羊であれば、そういった羊に対してクリーンフィードを行ったうえで出荷をするということになるんですけども、やはり時間がたってくると、600Bq/kgという基準を上回る羊が出なくなる牧場も出てくるんですって。そうすると、2年とか3年たった後に「この牧場はもう検査しなくてもいい」というようなことを言うんだそうです。

ただ1年そういう年があったとしても、2年目にまた跳ね返って基準を超える牧場もあるので、油断はできないよ、というふうなことを言ってましたけど。ただ基本的にその600Bq/㎏というのはこれ以上になったら対策する、これを上回りそうになれば対策する、という水準であって、それをもう下回ってしまった分に関しては検査はしない、というようなことがノルウェーの方針のようです。

司会:

ありがとうございました。それでは1つ目の講演をこれで終わりにしたいと思います。皆様ありがとうございました。佐藤さんありがとうございました。

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