福島おうえん勉強会

チェルノブイリ被災地訪問報告
−ベラルーシ・ノルウェーで見た「放射線と向き合う暮らし」−

第1部 「ノルウェーの被災地における畜産業と暮らし」

2.ヴァルドレス地方

スライド ヴァルドレス地方の地図

実は私たちが訪れたのは、この◯で囲ったヴァルドレスという地方です。

この地域にもトナカイ農家はいますが、先住民であるサーミ人によるものではなく、ノルウェー人の農家の人がトナカイを飼いならして、放牧していました。

さて、このヴァルドレス地方ですが、六つの自治体にまたがっており、人口はだいたい1万8000人です。

この地域の平均的な汚染度はセシウム137が1㎡あたり15万から30万Bqでした。ノルウェーに降り注いだチェルノブイリ由来の放射性物質の半分が、この地方に降下したと言われています。

しかしそのような悲劇とは裏腹に、非常に風光明媚な場所です。

スライド 写真:山と湖の写真】

これは私が撮った写真ですが、ちょうど10月の初めは木の葉っぱが緑から黄色に変わる頃で、非常にきれいな写真が撮れました。北欧では、赤く紅葉する葉っぱというのは珍しいです。むしろ、緑から黄色に変わって散っていく葉っぱの方が多いです。

スライド 写真:川の風景

それからヴァルドレス地方は急峻な丘陵地帯が多いです。

スライド 写真:街の建物と車

河に沿って深い谷があり、その川沿いに地域の中心部があり、商店や市役所の関係の建物があります。

スライド 写真:牧場と山

それから産業というと主に、畜産業と酪農業です。

スライド 写真:山羊の牧場】

この写真に写っているのは山羊の牧場ですが、後ろの方を見ると分かるように険しい、雪の積もった山々が近くまで迫っています。

スライド 写真:荒野

それからこのような不毛な荒野もありますし、

スライド 写真:森林地帯

この写真に写っているのは山羊の牧場ですが、後ろの方を見ると分かるように険しい、雪の積もった山々が近くまで迫っています。

スライド 写真:放牧地

繰り返しになりますが、この地域は土地が痩せているために農業は畜産と酪農業くらいしかできません。

基本的にこのあたりの農家は牧場経営者で、ひとつの牧場の周囲には牧草を栽培する牧草地が広がっています。

そこで牧草を刈り取って、秋、冬、春の家畜の餌にします。そして夏の3、4ヶ月ほどは、この写真にあるような、山岳地帯に広がる自然の中の放牧地で放牧を行うのです。

そしてそれが、この地方のひとつの伝統、言ってみればひとつの文化になっているわけです。これは、痩せた自然の土地をなるべく有効利用するために考え出された、ひとつのサイクルなのです。

ちなみに放牧と言っても放牧地は牧場ごとに決まっていて、この牧場の家畜は毎年決まった場所に行って草を食べることになっています。そして夏が終わって冬の季節が来る前に、屠殺して肉として出荷します。そうすることで、冬のあいだの餌代をなるべく抑えることができるのです。

スライド 写真:牛

このあたりで飼われている家畜と言いますと、牛ですね、牛乳と牛肉ですね。

スライド 写真:羊
スライド 写真:仔羊

それから羊。それから、これも羊なんですけれども仔羊で、その年の春に産まれたのをその年のうちに殺して肉にする、ということです。

スライド 写真:道路の山羊

それから山羊がいます。これは、私たちがちょうど通りかかったときに撮った写真なんですが、道にまではみ出して寝そべっています。車が来ても簡単には避けようとしません。対向車がやって来てやっと、のそのそと動き出すような、そういうのどかな風景です。

スライド 写真:トナカイ料理

そして、トナカイです。

これはトナカイは残念ながら肉になってしまったトナカイです(笑)。

残念ながら私たちが訪れたときには、生きたトナカイに遭遇することはありませんでした。その代わりトナカイの肉はご馳走になりました。

話はちょっとズレるんですが、この視察旅行のあいだにその土地で取れた様々な野生の肉を食べることになりました。

スライド 写真:ムース料理

たとえばこれはムース、ヘラジカですね。ヘラジカのシチューです。

ヘラジカは野生動物で、森に棲んでおり、猟師が狩りをしています。

スライド 写真:羊料理

それからこれは羊の肉を骨ごとキャベツと一緒に煮込んだ料理で、典型的な家庭料理だそうです。煮込むことで骨からブイヨンが染み出ていて、非常に美味しい料理でした。

スライド 写真:仔牛のステーキ

それからこれが仔牛のステーキです。非常に柔らかかった記憶があります。

スライド 写真:トナカイ料理2つ目 コケモモジャム付

そしてこれが、トナカイの肉を使った料理です。

おそらく塩漬けしてから干し肉にしたトナカイの肉を使っていると思います。ちなみにここに写っている赤いジャムのようなものは、これコケモモのジャムなんです。こういった甘酸っぱいジャムを肉や魚と一緒に食べるのが、北欧ならではの料理なのです。コケモモは森の中に自生しているので、ノルウェーにしてもスウェーデンにしても、近くの森に自分で摘みに行く人がたくさんいます。

このように多くの人々が自然と親しみながら、猟や魚釣り、キノコ狩り、ベリー摘み、そして自然散策を楽しんでいるような地域です。

先ほど言ったように、ノルウェーでは2011年になって初めて航空モニタリングをして汚染マップを作ったわけですが、それによって実はセシウム濃度が非常に高いホットスポットがこのヴァルドレス地方にあったことが、わかりました。

2011年の段階では、もちろんチェルノブイリから20年以上経っているわけで、その地域の放射線量もある程度、減衰していますが、逆算して事故直後はどうだったかを推計してみると、だいたい1㎡あたり75万Bqになったそうです。ここには雨などによる減少も含まれています。

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